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【記録】出汁を半分にできるのか?から始まった、パエリア厨房の小さな戦争

大変好評の紅ズワイガニちらしパエリア
大変好評の紅ズワイガニちらしパエリア

登場人物

  • 松本光慈(店主):地中海料理と設計検証を愛するBOQUERIA代表。すべての料理に“数字の答え”を求める性格。

  • ChatGPT(検証担当AI):原価計算・配合試作・文書化を担うが、肝心なところで詰めが甘い。

きっかけ:「出汁って半分にできないのか?」

ある仕込み中、松本がふと口にした。

「パエリア出汁、毎回200g使ってるけど、100gにできたら冷凍も運搬もだいぶ楽よな?」

当然、水を多めに足せば味は調整できるはず。ならば「出汁を濃縮して使えばいい」という話になる。飲食現場ではよくある発想だ。

その場でChatGPTに検証指示を出し、構成の試作が始まった。

目的はシンプルだった

  • 冷凍庫のストック効率を上げたい

  • 毎回200gの出汁計量が面倒

  • イベント時の持ち運びを軽くしたい

つまり「同じ味で使用量だけ減らしたい」

という一点に尽きた。

初期設計:「200gの出汁と同じ味を100gに詰めればいい」

ChatGPTは早速以下の案を提示:

「現行出汁200gに含まれる味成分を1.67倍圧縮すれば100g濃縮出汁になります」

この時点で松本はすぐ問い返す:

「いや、それって200gに含まれる“水”はどこいった?濃縮って水を飛ばすってことじゃないの?」

混乱が始まった:水と味成分のズレ

出汁は200g。そのうち実際の「味の成分」は何gなのか? GPTは、勝手に味成分=60g前後と仮定して話を進めていた。

→ 結果:ブイヨンやオニオンなど、全体で見ると本来の1/2しか素材が入ってない出汁100gが出来上がっていた。

松本:

「これ、水で300g足しても、そもそも味が薄いの当たり前やろ」

この時点で「濃縮=味の絶対量を変えずに水だけ減らす」が守られていないことが判明。

計算の修正:素材のg数を一切減らしてはいけない

松本が整理したポイント:

  • 100gの出汁ベースを作るなら、200g出汁分の素材はそのまま全部入っているべき

  • 使用時に水を足して400gにすれば味は一致する

  • 見かけの濃度(含有率)は違っていても、素材のg数が一致していれば味も一致する

このロジックに沿って再設計し、正確な原液構成を割り出した。

検証の結末:今回は断念

今回の「濃縮出汁」については、煮詰めることで濃度を上げるという設計は、理論的には数字上成立することは確認できている。

ただし、実際に煮詰め工程を伴う場合、

  • サフランなどの香り成分の気化

  • オニオン・トマトなどの加熱変質

  • 味のバランスが変化するリスク

が避けられず、「同じパエリアにはならない」ことが確実なため、検証前段階でリスクを判断し、今回は現行レシピの味を守る方針を優先して見送ることにした。

ただし、ゼロベースでレシピを新設計する際には、今回の「濃縮→水で戻す」という考え方は十分に活かせる可能性がある。


実際に進めてみたら、現行を超える味や運用性を得られることもあり得る。今後の開発レシピでは、この考え方をベース設計の一案として継続的に検証していく予定。

正しく設計すれば、確かに100g出汁+水300g=200g出汁+水200gと同じ味にできる。

が、それを仕込みの現場で“100gに詰める”となると:

  • 攪拌精度

  • 冷却管理

  • 乳化安定性

など物理的な実行難度が上がりすぎることがわかった。

→ 「出汁を半分にする」という目的は明確でも、 その設計と実行には別の設計思想とリスク管理が必要だった。

学んだこと

  • 味の一致=「水を含んだ最終量」ではなく「素材の絶対量」が基準

  • 含有率の比較だけで“濃度”を議論するのは誤解を生む

  • GPTは計算を間違える。だが、論理で詰めれば人間の方が正せる


まとめ

今回は「濃縮出汁ベース」は断念した。 でも、代わりに得られたのは

「味を変えずに何かを変える」って、想像よりずっと難しい

という、当たり前だけど現場でしか得られない実感だった。

BOQUERIAはこれからも、失敗も含めて料理の全部を、正直に出していきます。


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