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牛サガリは“58〜59℃”が美味しい──封印された肉汁領域にたどり着くまで


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低温スチームから立ちのぼる白い湯気の向こうで、温度計の数字がじわじわと58℃に近づいていく。「あと0.2℃…」息をのんで見守る瞬間、針がわずかに動いた。あの日から何度、肉を切っては試食を繰り返しただろう。芯温56℃、59℃、60℃──数字が変わるたび、肉汁の残り方や舌触りの違いを確かめ、頭の中で条件と結果を積み上げてきた。

そうしてたどり着いたのが、わずか1℃幅の温度帯。芯温58〜59℃。ここにこそ、肉汁を閉じ込め、噛んだ瞬間に解き放つための条件が揃っている。


58〜59℃の根拠

低温調理は、温度が数度違うだけで結果が変わる。56℃では肉汁は多いが流れ出やすく、皿の上に赤い液体が残る。60℃では保水は安定するが、筋繊維が収縮して食感がやや硬くなる。58〜59℃はその中間。柔らかさと肉汁のバランスが最も美しく、口の中で旨みが広がる。


大量仕込みでの課題と解決策

問題は、イベントや店舗での大量仕込みだ。一度に大量の冷蔵肉をスチーマーに入れると、庫内温度が一気に下がる。芯温の立ち上がりが遅れ、加熱時間が読みにくくなる。そこで予熱を90℃まで上げておき、投入直後の温度降下を最小限に抑えた。実測では、芯温58℃到達まで約80分。そこから温度を安定させ、58〜59℃を維持する。


工程の最適化

工程はシンプルにして、再現性を高めた。まず塩だけで24時間のドライブレイン。スチーム45℃で20分間の低温導入を行い、表面硬化を防ぐ。その後59℃に上げて芯温を58〜59℃まで引き上げる。到達後は50℃で10分休ませ、肉汁を筋繊維の中に再分散させる。最後は高温グリラーで両面を短時間焼き、香ばしさをまとわせて完成だ。


お客さんの反応

店舗で提供を始めてから1ヶ月。反応は上々で、お代わりする人もいるほどの人気メニューになった。イベントではまだ1回しか販売していないが、1皿¥2400という高価格でも「柔らかいのに旨みが逃げない」と高評価を得ている。


結論

火入れは温度帯で決まる。58〜59℃というわずかな幅が、肉の表情を劇的に変える。私たちはこの温度帯を“封印された肉汁領域”と呼ぶ。この1℃の中に、食感と旨みのすべてがあるのだ。


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